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先日、AOSpine Advances Seminarに参加してきた

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朝9時から夕方5時までの長時間にわたる講義であった。卓越した新技術を講師陣の方々に披露していただき、まさに世界のトップSpinal surgeon育成ののすばらしいセミナーであった。

高難度手術・新技術のためには先進的な医療が必要であり、優秀な人材育成と技術習得のプログラムが必要不可欠と考える。このためにご尽力している企業と講師陣には頭が下がるばかりだ。

その一方で「自分にはこういったことは真似できないな」ということを再認識する機会でもあった。それでも骨粗鬆症に対する対策や高齢者の麻酔管理、最新の知見といった身近な問題は、今後の診療に非常に有益であった。この情報を明日からの診療にぜひ役立てたいものである。

超音波ガイド下インターベンションが熱い!

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先日、『第25回 日本整形外科超音波学会』と『第47回 日本ペインクリニック学会』に参加してきました。

それぞれ整形外科・麻酔科といった専門が違うのですが、いずれの学会でも超音波ガイドでブロック注射をする教育研修講演・シンポジウムといったセッションやハンズオンを多く見られました。
この背景に超音波エコー機器の技術が進歩して、画像が格段によくなったことが挙げられます。一般の人に解りやすく例えるなら、白黒テレビとハイビジョンテレビくらいの違いといえば通じるでしょうか。

超音波ガイドは、手術のための伝達麻酔や治療としての腕神経叢ブロック、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症の神経根ブロックに応用されています。
また、中心静脈カテーテル(CVカテーテル)挿入時にガイドにしたり、肩関節腱板断裂や足関節靭帯損傷の診断・評価にも用いられることがあります。
そして、何よりも超音波自体は無侵襲で人体に影響がないといえる部分が評価されていますので、今後の活躍が期待されるツールです。

 

しかし、頚椎神経根ブロックに関しては慎重にならなくてはなりません。頚椎神経根の周囲には食道・気管・甲状腺・総頚動脈・総頸静脈・椎骨動脈などといった重要組織が複雑に配置されています。この中をかいくぐって目的となる神経根に命中させることは非常に難しく、多くの整形外科医が断念してきや部分です。私も麻酔科医としてペインクリニック研修をしていた時に数例経験しただけで、従来の体表のランドマークから放散痛(paresthesia)を手掛かりにしてイメージで針先を確認する方法では、高度なテクニックとリスクを伴うといわざるをえない、というのが現段階での結論です。

今回、脊椎外科医として注目しているのは、頚椎神経根ブロックが安全に行える手法として超音波が活用できる点です。
具体的には、以下の通りカラードップラーを使うと、一番危険な動脈には色(カラー)がつくのです。この色(カラー)のついた動脈を避けていけば、非常に安全にブロックができるのです。これはかなり画期的だと感じています。

大きいヘルニアが痛いわけじゃない

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「こんなに大きなヘルニアはなかなかありませんよ。ここの椎間板がでっぱって、後ろの神経を押しているでしょう。」と、医者に説明されるかもしれない。患者さんは驚き、MRIに映し出された巨大なネルニアを覗き込み眼球をまるくさせるだろう。

確かにMRIに映し出されたような巨大な腰椎椎間板ヘルニアでは、神経が圧迫する可能性は高くなる。

 

しかし、大きくても症状がないことすらありうる。なぜなら、 痛み生み出す神経根を圧迫していないからである。

「大きなヘルニアがあるのになんともない。」そんなこともありえるのである。

そして大きなヘルニアは、あれほど痛かったのにケロッと治る、ということがありうる。今までの激しい痛みが、ある日突然まったく症状がなくなり、痛くもかゆくもなく平気になるのである。

これは、大きいヘルニアほど後縦靭帯というバリアーを破り、脱出タイプ(sequestration)に移行して神経を圧迫しない状況になりやすい。 また、マクロファージのような貪食細胞を誘導してヘルニア塊の分解・吸収が進みやすいと考えられている。

事実として入院した手術前日にまったく痛みがなく、手術中止となった患者さんを何人か経験している。

やはり椎間板ヘルニアでは、ヘルニアの大きさより、いかに神経を圧迫していることが重要である。ヘルニアが大きいと説明されても、悲観する必要はないかもしれない。

小さいヘルニアが良いわけじゃない

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「ほらね、椎間板のここの部分、でっぱっているでしょう。」
「…どこです???」

MRIで腰椎椎間板ヘルニアを指摘されても、患者さんには医者の言っているヘルニアがさっぱりわからないことがある。

確かに小さいヘルニアの場合は、患者さんに画像上の正常とヘルニアの違いを理解することは困難である。
そのため、小さいヘルニアはMRI撮影をしても見逃されやすく放置されるケースが多い。

これに対して腰椎椎間板ヘルニアがないひとでは、ヘルニア同等の 少しの椎間板膨隆があったとしても、全く痛みを訴えないことがある。これは椎間板ヘルニアが突出する場所によって症状に大きな違いが生じてくるのである。

小さいヘルニアは、ピンポイントで神経を圧迫していて症状を引き起こす。このタイプは後縦靭帯の膜を破っていないため、なかなかマクロファージなどに吸収されない。

そのため、症状がなかなか改善せず、一年以上の保存治療してから最終的に手術に至るケースもある。

つまり小さいヘルニアだからといって安心できないし、 むしろ痛みが長期化してなかなか治らない可能性があるといえる。

腰の骨がひとつ多いですね…

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医者にこう言われて心配される方がたくさんいますが、心配いらないことが多いようである。
では、実際に腰の骨(腰椎)はいくつあるのか?

一般的には腰椎は第1腰椎~第5腰椎までの5個であるが、1個多かったり1個少ないことある。
これを腰仙移行椎という。いちばん下の腰椎が、仙椎に近い形をしている場合(腰椎の仙椎化)と、その逆にいちばん上の仙椎があたかも腰椎のような形をしている場合(仙椎の腰椎化)がある。

では背骨全体では骨はいくつあるのか?
脊柱は24個(頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個)の椎骨と仙骨・尾骨からなる。
これらの発生過程で胸椎の肋骨が退化したり、仙骨が癒合しきれずに腰椎化したりして脊椎数の異常は生じる。

つまり実際の椎骨数に異常があるかは、全脊椎のレントゲンを撮って数えないとわからないのである。
717人が17胸腰椎(通常の12個の胸椎と5個の腰椎)を持っていて、26人が通常より多い18胸腰椎、5人が通常より少ない16胸腰椎だったという報告もある。
このデータによれば、10%弱の人には多かったり少なかったりするわけで、結構な頻度で腰椎の仙椎化と仙椎の腰椎化は一定の頻度で生じている。腰の骨が多い少ないに関する腰仙移行椎が病態と関連していることはもちろんある。しかし、腰痛のある人がレントゲンを撮った機会にたまたま発見されることが多く、症状と関連ないことの方が多いように感じる。