Category Archives: 経皮的椎体形成術(BKP:Balloon Kyphoplasty)

骨粗鬆症性の圧迫骨折治療に再生医療!?

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「背骨が骨折しているので、万能細胞を注射しておきますね。」そう言って骨折は注射一本で治療する時代が来るのかもしれない。これは手術が不要になり、外科医は廃業となりうることを意味する。

本日の新聞で新型万能細胞「STAP」のニュースが飛び込んできた。

新型万能細胞「STAP」とは 再生医療・創薬応用に期待 - 世界が興奮、米指導教授も称賛

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/medical_issues/?id=6105483

  

昨今の再生医療は確実に進んでいて、我々整形外科医をおびやかしている訳だが、現実の医療として反映されるのはまだまだ先の印象である。

むしろ経皮的椎体形成術(BKP:Balloon Kyphoplasty)に使われている骨セメントがシリコンになりうるというニュースの方が現実的である。

http://www.carenet.com/news/general/carenet/37272

現在行われているBKPではポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)というアクリル樹脂を用いた骨セメントである。骨粗鬆症性椎圧迫骨折では全身の骨がもろいため、BKPを行っても隣接する椎骨に圧迫骨折を生じる二次骨折が問題である。骨折を治療しても、そのすぐ隣で骨折するいわば「いたちごっこ」の状況だ。

 

この強い剛性のPMMAに対して、海綿骨に近い生体力学的特性を有するシリコンにより二次骨折のリスクが軽減される可能性があるというのだ。脊椎外科医には骨粗鬆症治療に期待される報告である。

 

 

 

BKP治療の流れと手術痕

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002

①    背中から2か所に針を刺し、骨折した椎体への細い経路を作る。その椎体へ風船のついた器具をいれる。

②    椎体の中に入れた風船を圧力を見ながら膨らませる。潰れた椎体をできるだけ骨折前の形に整復する。

③    風船によりできた椎体の空間に骨セメントを満たす。

④    手術は1時間程度で終わり、満たされた骨セメントにより骨折部は安定化する。

 

背中傷あと

BKP(Balloon Kyphoplasty)

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BKP_BR_P.1バック

経皮的椎体形成術は、脊椎圧迫骨折(圧迫骨折)によってつぶれてしまった椎体を整復し、セメントを注入することにより安定化させて、痛みを和らげる治療法である。

1990年代にアメリカで開発された新しい治療法である。2010年2月に厚生労働省の承認を得て、現在は保険適用されている。この治療法には、脊椎手術を取り扱う専門施設でトレーニングを受けた医師が手術に関わるシステムとなっている。

対象となる患者さんは、十分な保存的治療によっても背中の痛みが改善しない脊椎圧迫骨折の方である。従来は、この脊椎圧迫骨折に対してコルセットなどの保存的療法を主体に行っていた。保存的療法では数か月~数年強い痛みが残る場合もあり、高齢者では活動性が低下して寝たきりとなることや、安静治療によりベット上で寝ていると合併症(肺炎・尿路感染症・痴呆など)を生じることが問題となっていた。こういった高齢者の痛みを軽減し活動性を改善するためにBKPは有効である。また、BKPは従来の手術方法に比べて低侵襲・短時間である。

他の疾患適応としては、まれに既存療法に奏功しない有痛性の転移性骨腫瘍や骨髄腫などの悪性脊椎腫瘍 の患者さんにBKPを行い疼痛の軽減を図ることもある。