昨今の脊椎手術を行った後に、痛みやしびれなどの問題が残存する『Failed Back』や『Failed Neck』は大きな課題である。腰椎術後疼痛症候群(FBSS:Failed Back Surgery Syndrome)は、アメリカにおいて頻度が高く、脊椎手術の適応・文化的背景などが発生に関与していると考えられている。慢性疼痛となったその病態には、神経損傷後疼痛・椎間板原性疼痛・筋由来の疼痛・心理環境因子などが複雑に絡み合っていることが多い。
厚生労働研究班の行ったインターネット調査では腰椎に手術後では約75%に腰部の痛みの残存をみとめ、約70%がしびれの残存をみとめることが明らかにされた。同様に頚椎手術においても高頻度に痛みが残存すことがわかってきている。
もちろん脊椎手術は、馬尾神経や神経根といった上肢症状や下肢痛に対して手術を行うことが主体である。腰痛・頸部痛や改善しないしびれを主な対象として手術することは少ない。しかし、術前にこういった説明を繰り返しても十分に理解を得られないことが、繰り返し手術を受け術後性腰痛症候群(MOB:multiply operated backまたはpostoperative lumbagoとか英語で言われている腰痛)と関連していると思われる。MOBは、術後も腰痛がスッキリしないなど症状の程度は様々であり、世界中に広く認められる腰痛であり、治療に抵抗する代表的な慢性痛の一つである。