Monthly Archives: 1月 2014

骨粗鬆症性の圧迫骨折治療に再生医療!?

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「背骨が骨折しているので、万能細胞を注射しておきますね。」そう言って骨折は注射一本で治療する時代が来るのかもしれない。これは手術が不要になり、外科医は廃業となりうることを意味する。

本日の新聞で新型万能細胞「STAP」のニュースが飛び込んできた。

新型万能細胞「STAP」とは 再生医療・創薬応用に期待 - 世界が興奮、米指導教授も称賛

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/medical_issues/?id=6105483

  

昨今の再生医療は確実に進んでいて、我々整形外科医をおびやかしている訳だが、現実の医療として反映されるのはまだまだ先の印象である。

むしろ経皮的椎体形成術(BKP:Balloon Kyphoplasty)に使われている骨セメントがシリコンになりうるというニュースの方が現実的である。

http://www.carenet.com/news/general/carenet/37272

現在行われているBKPではポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)というアクリル樹脂を用いた骨セメントである。骨粗鬆症性椎圧迫骨折では全身の骨がもろいため、BKPを行っても隣接する椎骨に圧迫骨折を生じる二次骨折が問題である。骨折を治療しても、そのすぐ隣で骨折するいわば「いたちごっこ」の状況だ。

 

この強い剛性のPMMAに対して、海綿骨に近い生体力学的特性を有するシリコンにより二次骨折のリスクが軽減される可能性があるというのだ。脊椎外科医には骨粗鬆症治療に期待される報告である。

 

 

 

腰椎の手術で腰痛は残ることが多く、しびれも多くは残る!?

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昨今の脊椎手術を行った後に、痛みやしびれなどの問題が残存する『Failed Back』や『Failed Neck』は大きな課題である。腰椎術後疼痛症候群(FBSS:Failed Back Surgery Syndrome)は、アメリカにおいて頻度が高く、脊椎手術の適応・文化的背景などが発生に関与していると考えられている。慢性疼痛となったその病態には、神経損傷後疼痛・椎間板原性疼痛・筋由来の疼痛・心理環境因子などが複雑に絡み合っていることが多い。

厚生労働研究班の行ったインターネット調査では腰椎に手術後では約75%に腰部の痛みの残存をみとめ、約70%がしびれの残存をみとめることが明らかにされた。同様に頚椎手術においても高頻度に痛みが残存すことがわかってきている。

 

もちろん脊椎手術は、馬尾神経や神経根といった上肢症状や下肢痛に対して手術を行うことが主体である。腰痛・頸部痛や改善しないしびれを主な対象として手術することは少ない。しかし、術前にこういった説明を繰り返しても十分に理解を得られないことが、繰り返し手術を受け術後性腰痛症候群(MOB:multiply operated backまたはpostoperative lumbagoとか英語で言われている腰痛)と関連していると思われる。MOBは、術後も腰痛がスッキリしないなど症状の程度は様々であり、世界中に広く認められる腰痛であり、治療に抵抗する代表的な慢性痛の一つである。

BKP治療の流れと手術痕

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①    背中から2か所に針を刺し、骨折した椎体への細い経路を作る。その椎体へ風船のついた器具をいれる。

②    椎体の中に入れた風船を圧力を見ながら膨らませる。潰れた椎体をできるだけ骨折前の形に整復する。

③    風船によりできた椎体の空間に骨セメントを満たす。

④    手術は1時間程度で終わり、満たされた骨セメントにより骨折部は安定化する。

 

背中傷あと