「こんなに大きなヘルニアはなかなかありませんよ。ここの椎間板がでっぱって、後ろの神経を押しているでしょう。」と、医者に説明されるかもしれない。患者さんは驚き、MRIに映し出された巨大なネルニアを覗き込み眼球をまるくさせるだろう。
確かにMRIに映し出されたような巨大な腰椎椎間板ヘルニアでは、神経が圧迫する可能性は高くなる。
しかし、大きくても症状がないことすらありうる。なぜなら、 痛み生み出す神経根を圧迫していないからである。
「大きなヘルニアがあるのになんともない。」そんなこともありえるのである。
そして大きなヘルニアは、あれほど痛かったのにケロッと治る、ということがありうる。今までの激しい痛みが、ある日突然まったく症状がなくなり、痛くもかゆくもなく平気になるのである。
これは、大きいヘルニアほど後縦靭帯というバリアーを破り、脱出タイプ(sequestration)に移行して神経を圧迫しない状況になりやすい。 また、マクロファージのような貪食細胞を誘導してヘルニア塊の分解・吸収が進みやすいと考えられている。
事実として入院した手術前日にまったく痛みがなく、手術中止となった患者さんを何人か経験している。
やはり椎間板ヘルニアでは、ヘルニアの大きさより、いかに神経を圧迫していることが重要である。ヘルニアが大きいと説明されても、悲観する必要はないかもしれない。