先日、『第25回 日本整形外科超音波学会』と『第47回 日本ペインクリニック学会』に参加してきました。

それぞれ整形外科・麻酔科といった専門が違うのですが、いずれの学会でも超音波ガイドでブロック注射をする教育研修講演・シンポジウムといったセッションやハンズオンを多く見られました。
この背景に超音波エコー機器の技術が進歩して、画像が格段によくなったことが挙げられます。一般の人に解りやすく例えるなら、白黒テレビとハイビジョンテレビくらいの違いといえば通じるでしょうか。

超音波ガイドは、手術のための伝達麻酔や治療としての腕神経叢ブロック、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症の神経根ブロックに応用されています。
また、中心静脈カテーテル(CVカテーテル)挿入時にガイドにしたり、肩関節腱板断裂や足関節靭帯損傷の診断・評価にも用いられることがあります。
そして、何よりも超音波自体は無侵襲で人体に影響がないといえる部分が評価されていますので、今後の活躍が期待されるツールです。

 

しかし、頚椎神経根ブロックに関しては慎重にならなくてはなりません。頚椎神経根の周囲には食道・気管・甲状腺・総頚動脈・総頸静脈・椎骨動脈などといった重要組織が複雑に配置されています。この中をかいくぐって目的となる神経根に命中させることは非常に難しく、多くの整形外科医が断念してきや部分です。私も麻酔科医としてペインクリニック研修をしていた時に数例経験しただけで、従来の体表のランドマークから放散痛(paresthesia)を手掛かりにしてイメージで針先を確認する方法では、高度なテクニックとリスクを伴うといわざるをえない、というのが現段階での結論です。

今回、脊椎外科医として注目しているのは、頚椎神経根ブロックが安全に行える手法として超音波が活用できる点です。
具体的には、以下の通りカラードップラーを使うと、一番危険な動脈には色(カラー)がつくのです。この色(カラー)のついた動脈を避けていけば、非常に安全にブロックができるのです。これはかなり画期的だと感じています。